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2006.08.28
薬屋は忘れた頃にやってくる

ある日、くりぃむしちゅーの上田によく似た男がやってきて、「置くだけでいいですから、ほんと置くだけでいいですから」といって薬箱を置いていった。野暮ったい顔とウソ臭い笑みがほんと上田にそっくりだった。
通常、私は薬というものはほとんど使わない。胃腸が調子悪かろうが、少々風邪をひこうが、薬に頼ったら負けだなんて勝手に思っていて、なるべく使わないようにしている。だから、「どうせ使わないよ」と軽く契約した。
薬は使わないんだけど、時に冷蔵庫に飲み物が切れることがある。ロビーの自販機に行くのも面倒だ。そういえば、上田(本名は忘れた)が「夏場は体が酸性になりやすいから、なんとかかんとか」と言いながら一緒に置いていった黒酢ドリンクがあった。
もう3ヶ月は過ぎてるのに点検に来ないし、忘れたのか?あるいは会社が潰れたんじゃないだろうか、と自分に都合の良い想像が広がる。1本くらいいいかと、口にすると意外と美味い。それからちょくちょく手を出していたら、1ケース開けてしまった。
上田はその翌月にウチのピンポンを押した。
「いやぁ、全部飲んで頂けましたか。体の調子がいいでしょう。私も毎日飲んでます。
今度は栄養ドリンクも置いときましょうね。風邪の初期症状の時飲むと効きますよ、体がポカポカしてきますから…」
上田は嬉しそうに薬を入れ替えて行った。
置き薬屋は毎月集金に来るわけではないようだ。
その反省を活かそうと思い、次は薬箱を数ヶ月クローゼットに入れておいた。
ところが今度は半年過ぎても連絡が無い。さすがに長すぎだろう。上田は辞めたに違いない。
丁度、海に入りすぎて眼が痛かったので、薬局で目薬買うのも同じだからと封を開けた。
訪ねてきた知人が「疲れた」を連発するので、「これならあるよ」と栄養ドリンクをあげた。
腰が痛いのでシップをはった。
二日酔いで気持ち悪いので胃薬飲んだ。
無ければないで済ますものをあるがゆえに使ってしまう。これって置き薬屋の術中に見事にハマッてるってこと?
上田は10ヶ月くらい過ぎてやってきた。
上田の手のひらで私は転がっている。
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